プロヘキサジオンカルシウム塩(KIM-112)の発見経緯

プロヘキサジオンカルシウム塩(KIM-112)プロヘキサジオンカルシウム塩(KIM-112)  KIM-112の発見は他の開発剤とは趣を異にし、その端緒はケイ・アイ研究所設立前のイハラケミカル工業での創製研究にあった。

 1980年5月イハラケミカル研究所ではクミアイ化学工業合成陣が合成したKK-80関連の工業化研究が重点的に行われていたが、並行して新農薬の探索もなされており、日本曹達が開発したNP-48,NP-55(NP化合物)以上の活性を示す畑作除草剤の発見を研究目標としていた。

 NP化合物はシクロヘキサンジオンタイプの化合物であったが、これをシクロヘキサントリオンタイプに変換することで除草活性にどのような変化が現れるのかという研究を精力的に実施していた。

 研究室の横にはミーティングルームがあり、主任研究員を中心としたフリーディスカッションが日に何回となく行われていた。ある日、当時の主任研究員がシクロヘキサントリオンの5-位のカルボニル基を環外に出してみたらどうなるかという提案を黒板に書かれた。
これがKIM-112開発のそもそもの発端であった。

  3,5-ジヒドロキシ安息香酸を接触還元することから研究がスタートしたが、最初は還元体の水溶性が高いためうまく単離できず、再度トライののちに3,5-ジオキソシクロヘキサン-1-カルボン酸の単離に成功し、そのエステル体の4-位をアシル化することにより得られた新規中間体をKI-1165として登録した。1981年6月のことであった。

プロヘキサジオンカルシウム塩(KIM-112) KI-1165の登録後しばらくして、クミアイ化学生物科学研究所の研究員から電話があり、興味ある作用性を示した旨報告された。すなわちヒエの茎葉処理試験結果では生育が抑制され葉面の幅が拡大し、葉色が濃緑化するというものであった。この結果を受けて同年12月より発足当初のケイ・アイ研究所に場所を移してさらに関連化合物の合成展開を図るとともに、作用特性(作用機作)、適用性、化合物安定性、製剤安定性、安全性そして工業的合成法など種々の検討が各部署により加えられた。

 3,5-ジオキソシクロヘキサン-4-プロピオニル-1-カルボン酸は2塩基性酸であり、酸性が強いこと、その化合物特性から1-位カルボン酸のエステルおよび4-位アシル基が加水分解しやすく化合物安定性が低いことなどが問題点であった。

 この点を改善すべく種々の有機塩および無機塩について検討を加えた結果、最終的に3,5-ジオキソシクロヘキサン-4-プロピオニル-1-カルボン酸のカルシュウム塩であるBX-112 (ビビフル)が選抜された。

 これより溯った、1982年のある日、3,5-ジオキソシクロヘキサン-4-プロピオニル-1-カルボン酸エステル体のカルシュウム塩を得ようとして水酸化カルシュウムで反応を試みたところ粉末状結晶が得られた。

 しかし、その結晶は各種有機溶剤及び水に溶けないため構造決定(NMR測定不能)できず、登録しなかった。

 これは生成物の物理化学的性状から考えると、反応系中の僅かな水分によりエステルが加水分解され、カルシュウム塩(BX-112)が既にその時点で生成していたのではないかと考えられる。

 日々の研究結果について、多角的な徹底した解析がいかに必要であるかということを改めて思い知らされるできごとであった。

 振り返ってみると、工業的中間体の有効利用という観点から、除草剤をターゲットとする研究であってもその合成過程で生じた新規な中間体を化合物台帳に登録し、生理活性を見ることにしていたことが結局はビビフルの開発につながったと思われる。

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